再会 第3章 (最終章)
皺になったら困ると文句を言い、無理やり流川を部屋から出したは。
その辺にかけてあった流川のトレーナーに着替える。
高校卒業後、また背が伸びたのか、190cmの身長がある為、流川のトレーナーはの膝まで隠してしまう長さがあった。
いいよーと声をかけ、はベッドに座ったまま、剥き出しの足を、布団で覆う。
入ってきた流川は、の着ているトレーナーに目をくれるが、何も言わず、自分も着替え始めた。
:「………きゃあとか言って、目、覆った方がいい?」
流川:「……別に。 ……見られて困るほどのモンじゃねーから」
自信あるのねと笑いながら、はふと思いつき、流川に声をかける。
:「………流川君、寝る?」
それが普通に睡眠をとる、という意味ではない事に、さすがの流川でも気がついた。
脱いだスーツその辺に放り出し、流川はの横にもぞもぞと入る。
流川とて、その場かぎりの女と寝る趣味はない。
でも、再会したを見て、欲しいと思ったのは事実だ。
流川:「……オレは三井サンじゃねーぞ…」
代用として求められる位なら、コタツで眠った方がまだマシだ。
そう言って、座ったまま動かない流川を、がグイっと引っ張った。
:「かわりになんて、なんないでしょう?」
あんたは流川君で、三井寿じゃない。
流川はに覆いかぶさった。
じっとりと汗をかき、頬に張りついた髪を、空いた手で流川が払い落とす。
赤く色づいたの肌は、昔以上に輝いて見えた。
が三井と付き合い始めた時。
体育館でも、試合会場でも、人目をぬすんでキスをする2人を、流川はじっと見ていた。
あの頃は、自分の入る余地はないと、1度は諦めた隙間に。
流川は今、足を踏み入れたのだ。
流川がシャワーから出た頃、先に浴び終わっていたは、情事の温もりが残るベッドで、すやすやと寝息をたてていた。
流川が脱ぎ散らかした服も、綺麗にたたまれ、ベッドの横に置いてある。
部屋が少し寒く感じ、流川はエアコンのタイマーをセットする。
ベッドの揺れに気づき、が目を覚ました。
抱きこむように腕を回す流川に、はくすくす笑い、流川に視線を合わせる。
:「ね、さっき会社まで送るとか言ってたけど、ゆっくり寝てていいからね?」
意味が分からない、という顔をする流川に、は言う。
:「こーんな有名人、足にしてるの見られたら、みんなびっくりするじゃない」
流川の言葉はうれしいけど、本当に大変な事になってしまう。
隠れて付き合うならまだしも、会社になど行けば、業界関係者がたくさんいるのだ。
一瞬で広まり、流川の生活にも、大きな影響を与えてしまうだろう。
流川:「………かまわねー。 いちいち人の事、気にすんじゃねー」
自分がどれほど有名人なのか、分かっていないのか。
困った顔のに、流川は迷惑かと聞いた。
そんなわけないと首をふれば、流川にぎゅっと抱き締められる。
流川:「…送る。 ・・・・・・・・・・・・いや、ここに住め。 決まりだ」
勝手に決定され、文句を言おうとバタバタするに、流川はもう1度聞いた。
流川:「…迷惑か?」
:「………光栄です……」
何も心配するなと言い、を抱き締めたまま、流川は眠りについた。
………明日、どーしよーかな。
考えても何も出てこなかったので、もそのまま、目を閉じた。
一週間後。
彩子:「ちょっとリョータ!! 起きてよ!」
リョータ:「・・・・・・何、彩ちゃん、まだ足りないの? ・・だめだよ、妊婦なんだし・・・・・・・」
バコーーン
丸めてハリセン替わりにしたものが、ソレだった事に気づき、彩子は慌ててリョータの前に広げる。
2人の新居(とは言っても、すでに同棲していたリョータの部屋だが)に届いた朝刊、スポーツ欄には。
『JBL・スーパースター流川、熱愛発覚!? お相手はフリーで活躍中のメイクアーティスト』
JBLで活躍中のスーパースター、流川 楓(25)が、メイクアップアーティスト、
さん(26)と交際していることが昨日、関係者の証言で発覚した。
関係者によると、流川氏とお相手のさんは、高校時代の先輩、後輩であり、先日、友人の結婚式で再会を果たした。
その後、流川氏が彼女を会社に送り迎えし、2人仲良く流川氏のマンションへ入っていく所も、何度か目撃されているという。
さんは現在フリーで活躍しており、今後も、ファッションショーや、大手化粧品会社からのオファーなど、大きな活躍が期待されている。
流川氏も、現在は日本で活躍中であるが、NBAへの移籍もささやかれるなど、かなりビッグなカップルとなりそうだ。
流川氏の所属チームによると、「プライベートは本人に任せております。 お相手のさんも、
何度か練習に訪れ、チームメイトを交えて一緒に食事をするなど、いいお付き合いをさせて頂いております」と交際を認めている。
結婚については「お互い忙しい身分であり、すぐに結婚とまではいかないだろうと思います」と否定した。
多数の女性ファンを持つ流川氏であるだけに、さんサイドはコメントを控えるなど、ピリピリしたムードも漂う。
今回の報道については、流川氏の事務所と相談の上、今後何らかの形で、正式に発表をする予定だと言う。
リョータ:「・・・・・・・・・マジ!? ちゃんと流川、かぁ・・・・・・・・・」
彩子:「それにしても、あたしたちの結婚が縁でv なーんて、ちょっと嬉しいわね〜」
一番に連絡を欲しかった気持ちもあったが、記事にもあるように、相当ピリピリとしているだろうと彩子は察する。
落ちついたら連絡があるだろうと、2人は甘い新婚生活を楽しむ事にした。
END